弔辞・弔電のマナー:書き方、タブー、例文
故人への深い哀悼の意と、ご遺族へのいたわりの気持ちを伝える弔辞(ちょうじ)と弔電(ちょうでん)。
いざという時に慌てないよう、それぞれの役割とマナーを正しく理解しておくことが大切です。
今回の記事では、弔辞と弔電の書き方、注意すべきタブー、そしてすぐに使える例文を分かりやすく解説します。
1. 弔辞と弔電の基本的な違い
弔辞(ちょうじ)
故人に贈るお別れの言葉です。通夜や葬儀・告別式で、故人と親しかった人が祭壇の前で読み上げます。直接、故人の霊前に語りかける形で気持ちを伝えます。
弔電(ちょうでん)
やむを得ない事情で通夜や葬儀に参列できない場合に、お悔やみの気持ちを伝えるために送る電報です。葬儀・告別式で読み上げられるのが一般的です。
2. 弔辞の書き方とマナー
弔辞は、故人との最後のお別れの場であると同時に、ご遺族の心にも残る大切なものです。心を込めて丁寧に準備しましょう。
【書き方の基本構成】
弔辞は、以下の流れで構成するのが一般的です。
- 故人への呼びかけ:冒頭で、誰への言葉であるかを明確にします。「〇〇君」「〇〇さん」「〇〇部長」など、生前と同じ呼びかけで語りかけます。
- 訃報に接した驚きと悲しみ:突然の悲報に対する驚きや、信じられない気持ち、深い悲しみを述べます。
- 故人との思い出や人柄、功績:故人と共有した具体的なエピソードを交えながら、その人柄や功績を偲びます。個人的な思い出を語ることで、弔辞に深みが出ます。
- ご遺族への慰めの言葉:大切な方を失ったご遺族の悲しみに寄り添い、お悔やみの言葉を述べます。
- 結びの言葉:故人の冥福を祈り、安らかな眠りを願う言葉で締めくくります。「どうぞ安らかにお眠りください」「心よりご冥福をお祈り申し上げます」など。
【用紙と筆記用具】
- 用紙:正式には「奉書紙(ほうしょがみ)」や「巻紙」を用います。なければ、白い無地の便箋でも構いません。
- 筆記用具:「薄墨(うすずみ)」の毛筆や筆ペンで書くのが正式なマナーです。「悲しみの涙で墨が薄まった」「急なことで墨をする時間がなかった」という意味が込められています。
- 包み方:書き終えた弔辞は、奉書紙で包みます。表書きは「弔辞」とします。
【長さと読み方】
- 長さの目安:3分程度で読み終えるのが適切です。文字数にすると800字~1200字程度です。
- 読み方:祭壇の前で一礼し、故人の遺影に語りかけるように、ゆっくりと、心を込めて読み上げます。読み終えたら、祭壇に供え、再度一礼して席に戻ります。
3. 弔電の送り方と書き方
遠方からでもお悔やみの気持ちを迅速に伝えられるのが弔電です。
送り方のマナー
- タイミング:訃報を受けたら、できるだけ早く手配します。遅くとも告別式の開始前には届くようにしましょう。通夜に間に合わせるのが理想です。
- 宛名:喪主(もしゅ)の名前で送るのが基本です。喪主が分からない場合は、「故〇〇様 ご遺族様」としても問題ありません。
- 差出人:フルネームと、故人との関係性が分かるように所属(会社名・部署名、学校名、友人など)を明記します。連名で送ることも可能です。
- 申し込み方法:NTT(115番)や、郵便局、インターネットの電報サービスなどで申し込めます。台紙の種類も豊富にあります。
文面のポイントと構成
弔電は簡潔にまとめるのが基本です。
- お悔やみの言葉:冒頭に、故人の逝去を悼む言葉を述べます。
- ご遺族へのいたわり:ご遺族の悲しみを気遣う言葉を添えます。
- 参列できないお詫び:(必要であれば)参列できない理由を簡潔に述べ、お詫びの気持ちを伝えます。
- 結びの言葉:故人の安らかな眠りを祈る言葉で結びます。
敬称の使い方
弔電では、故人や喪主に対する敬称の使い方が重要です。
| 喪主から見た故人 | 敬称 |
| 父 | ご尊父(そんぷ)様、お父様 |
| 母 | ご母堂(ぼどう)様、お母様 |
| 夫 | ご主人様、ご夫君(ふくん)様 |
| 妻 | ご令室(れいしつ)様、ご令閨(れいけい)様 |
| 祖父 | ご祖父(そふ)様、おじい様 |
| 祖母 | ご祖母(そぼ)様、おばあ様 |
| 息子 | ご子息(しそく)様、ご令息(れいそく)様 |
| 娘 | ご息女(そくじょ)様、ご令嬢(れいじょう)様 |
4. 弔辞・弔電で避けるべき「忌み言葉」
弔辞や弔電では、不幸が続くことや死を直接的に連想させる「忌み言葉」を使わないのがマナーです。
- 重ね言葉:不幸が重なることを連想させるため避けます。
- 例:重ね重ね、くれぐれも、たびたび、またまた、追って
- 直接的な表現:死を直接的に表現する言葉は避け、柔らかい表現に言い換えます。
- 例:「死亡」→「ご逝去(せいきょ)」、「亡くなる」→「ご永眠」
- 不吉な言葉:「苦しむ」「迷う」や、数字の「四(死)」「九(苦)」など。
- 生死に関する生々しい表現:「生きている頃」→「ご生前」、「命」→「お命」
- 宗教・宗派に関する注意:相手の宗教が分からない場合は、特定の宗教用語(「成仏」「冥福」「天国」など)は避けるのが無難です。「安らかなお眠りをお祈りいたします」といった表現が使えます。
- 仏教:「冥福」「成仏」「供養」などが使われます。
- キリスト教:「安らかな眠り」「神のもとでの平安」といった表現を使います。「ご愁傷様」「お悔やみ」も使いません。「安らかなお眠りをお祈り申し上げます」が一般的です。
- 神道:「御霊(みたま)のご平安」などの表現を使います。
5. 例文
弔辞の例文(友人代表)
〇〇君。
君の突然の訃報に接し、今、ここに立って君に別れの言葉を述べていることが、まだ信じられません。
私たちが大学で出会ってから、もう十年以上の月日が経ちましたね。いつも皆の中心で、太陽のように明るい笑顔で周りを照らしていた君の姿が、今も鮮明に思い出されます。悩んでいるとき、いつも真っ先に声をかけてくれ、君のその一言にどれだけ救われたか分かりません。
社会人になってからも、お互いの近況を報告し合い、励まし合った日々は、私にとってかけがえのない宝物です。もっとたくさん、君と語り合いたいことがありました。一緒に行きたい場所も、たくさんありました。そう思うと、悔しくてなりません。
ご家族の皆様のご心痛は、いかばかりかとお察し申し上げます。
〇〇君、たくさんの素晴らしい思い出を本当にありがとう。君と出会えたことを心から誇りに思います。どうぞ、安らかにお眠りください。心より、ご冥福をお祈りいたします。
令和〇年〇月〇日 友人代表 〇〇 〇〇
弔電の例文
【一般的な文例】
ご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。ご生前のご厚情に深く感謝するとともに、故人の安らかなお眠りをお祈りいたします。
【友人・知人宛】
〇〇様の突然の悲報に接し、言葉を失っております。いつも笑顔だったお姿が目に浮かび、胸が張り裂ける思いです。ご遺族の皆様のご傷心を思うと、お慰めの言葉もございません。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
【会社関係者宛】
貴社〇〇様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。ご生前のご功績を偲び、社員一同、心より哀悼の意を表します。
【キリスト教の場合】
〇〇様の安らかなお眠りをお祈り申し上げます。神の御もとで安らかに憩われますよう、心よりお祈りいたします。ご遺族の皆様の上に、主の慰めがありますようお祈り申し上げます。
まとめ:ここまで弔辞・弔電の書き方やマナーをご紹介してまいりました。 突然の訃報に接した際、言葉選びや作法に戸惑い、不安に思うのは当然のことです。
しかし、数多くのマナーや慣習以上に大切なのは、故人を心から悼み、深い悲しみの中にいるご遺族にそっと寄り添う、あなたのその温かいお気持ちです。
ご紹介した内容は、その大切な気持ちを形にし伝えるための一つの手引きに過ぎません。ぜひ、これらを参考にしながらも、故人様との具体的な思い出や、ご自身の素直な言葉を添えてみてください。
心のこもった一言一言が、故人様への何よりの供養となり、ご遺族の心を慰める温かい光となるはずです。
この内容が、いざという時に落ち着いて故人様とのお別れに向き合い、心を込めた言葉を贈るための一助となれば幸いです。