玉串奉奠(たまぐしほうてん)の作法
神式の葬儀における手順
神道の葬儀「神葬祭(しんそうさい)」や、地鎮祭、七五三などの神事において行われる「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」。
仏式の焼香やキリスト教式の献花にあたる、故人や神様への敬意と祈りを捧げるための重要な儀式です。
今回の記事では、いざという時に慌てないよう、玉串奉奠の正しい作法と、その意味について分かり安くご案内いたします。
玉串奉奠とは?
玉串奉奠は、自身の心を玉串に乗せて神様に捧げる、という意味を持つ神道の儀礼です。
玉串(たまぐし)とは、神聖な木とされる榊(さかき)の枝に、紙垂(しで)と呼ばれるギザギザの白い紙を結びつけたものです。
神様への捧げものであると同時に、神様の御霊が宿る依り代(よりしろ)とも考えられています。
この玉串を祭壇に供えることで、故人の御霊(みたま)を慰め、安らかな眠りを祈ります。
玉串奉奠の基本的な作法・手順
玉串奉奠は、喪主、遺族、親族、一般の参列者の順で行われます。基本的な流れは以下の通りです。
1. 玉串を受け取る
順番が来たら席を立ち、祭壇の手前へ進みます。
まずは遺族と神職(斎主)に一礼します。 神職から玉串を渡されたら、両手で丁寧に受け取ります。
- 右手: 根元の方を上から包むように持ちます。
- 左手: 葉先の方を下からそっと支えます。
玉串は胸の高さに、少し肘を張るようにして持ちます。このとき、左手の葉先側が少し高くなるようにします。
2. 祭壇へ進み、一礼する
玉串を持ったまま、祭壇の前にある玉串を置く台「玉串案(たまぐしあん)」の一歩手前まで進みます。 ここで、故人の遺影(御霊前)に向かって深く一礼(お辞儀)します。
3. 玉串を回転させ、祈念する
玉串を胸の高さに持ち上げたまま、時計回りに90度回転させ、玉串を縦にします。このとき、根元が手前、葉先が天井を向く形になります。
左手を根元の方に下げて持ち、右手は葉先の下に添えるようにして、故人の安らかな眠りを心の中で祈ります(※祈念)。
※祈念(きねん)とは?
通常の‘’祈り‘’とは異なり、「念」という漢字が使われている通り、心に強く思い浮かべ、その実現を願うことをさし、より具体的で、強い意志が込められた祈りです。
玉串奉奠においては、故人の安らかかな眠りや神様への感謝などを心の中で静かに思う時間にあたります。
4. 玉串を供える
祈念を終えたら、玉串をさらに時計回りに回転させ、根元を祭壇(遺影)側に向けます。 両手で玉串の中ほどを下から支えるように持ち、玉串案の上に静かに置きます。
【ポイント:玉串の回転】
- 受け取る時: 根元が右、葉先が左
- 祈念する時: 根元が手前(縦向き)
- 供える時: 根元が祭壇側
5. 二礼二拍手一礼(にれい にはくしゅ いっぱい)
玉串を供えたら、祭壇を向いたまま一歩下がります。ここから神道独自の拝礼を行います。
- 二礼: まず、腰を90度に曲げる深いお辞儀を2回行います。
- 二拍手: 胸の前で両手を合わせ、2回手を打ちます。
- ※葬儀など弔事の場合は、音を立てずに手を合わせる「しのび手(忍び手)」で行います。
- 右手を少し下にずらして打ち、音を立てないのがマナーです。神社での参拝のように「パンパン」と音は立てません。
- 一礼: 最後に、もう一度深いお辞儀を1回行います。
6. 退場
拝礼が終わったら、祭壇を向いたまま数歩下がり、遺族と神職に一礼してから自席に戻ります。
まとめ
玉串奉奠は、普段あまり経験することのない儀式のため、作法に戸惑うかもしれません。しかし、最も大切なのは故人の御霊を敬い、安らかな眠りを祈る心です。
細かい手順に自信がなくても、一つひとつの動作を丁寧に行うことを心がければ、その気持ちは必ず故人やご遺族に伝わります。もし分からなくなった場合は、前の人の作法を参考に、落ち着いて臨みましょう。