葬儀での挨拶
葬儀の場では、お悔やみの気持ちや感謝の心を伝えるための挨拶が欠かせません。しかし、立場によってその内容や役割は大きく異なります。
今回の記事では、「喪主・遺族代表」「親族」「一般参列者」それぞれの立場における挨拶について、目的、タイミング、具体的な例文を交えながら詳しく、分かりやすくご案内します。
1. 喪主・遺族代表の挨拶
喪主または遺族代表の挨拶は、葬儀の各場面で参列者への感謝を伝える、非常に重要な役割を担います。
【役割と心構え】
- 参列いただいたことへの感謝を伝える。
- 故人が生前お世話になったことへのお礼を述べる。
- 今後も遺族への変わらぬ支援をお願いする。
挨拶は簡潔に、心を込めて丁寧に行うことが大切です。悲しみのあまり言葉に詰まっても失礼にはあたりません。事前にメモを用意し、読み上げても問題ありません。
【挨拶を行う主なタイミングと構成要素】
挨拶は主に以下の場面で行います。それぞれの場面で、基本となる構成要素を組み合わせて話します。
- お通夜の閉式時
- 告別式の閉式時・出棺前
- 精進落とし(会食)の席
基本的な挨拶の構成要素
- 弔問への感謝:参列いただいたことへのお礼を述べます。
- 故人の紹介と逝去の報告:故人の簡単な人柄や、亡くなった際の状況(「かねてより病気療養中のところ」「去る〇月〇日、〇歳にて永眠いたしました」など)を簡潔に伝えます。
- 生前のご厚誼への感謝:故人が生前お世話になったことへのお礼を述べます。
- 遺族への支援のお願い:残された家族への変わらぬお付き合いをお願いします。
- 結びの挨拶:再度、参列への感謝の言葉で締めくくります。
【例文】
① お通夜の閉式時の挨拶(例文)
「本日はご多忙のところ、またお足元の悪い中、〇〇(故人名)のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。 故人も、このように皆様にお見送りいただき、さぞ喜んでいることと存じます。 生前、皆様から寄せられましたご厚情に、故人に代わりまして心より御礼申し上げます。 明日の告別式は、午前〇時より〇〇斎場にて執り行います。何卒よろしくお願い申し上げます。 本日は誠にありがとうございました。」
② 告別式の閉式・出棺前の挨拶(例文)
「遺族を代表いたしまして、皆様に一言ご挨拶申し上げます。 本日は、ご多用中にもかかわらず、〇〇(故人名)の葬儀・告別式にご会葬を賜り、誠にありがとうございました。 かくも大勢の皆様にお見送りいただき、故人もさぞかし喜んでいることと存じます。 〇〇は〇年にわたる闘病生活でございましたが、最後まで穏やかな最期でございました。 生前の皆様からの温かいご厚誼に、心から感謝申し上げます。 残されました私ども家族にも、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 本日は誠にありがとうございました。」
2. 親族の挨拶
喪主以外の親族は、公式な挨拶の場はありませんが、参列者一人ひとりへの個別対応が主な役割となります。
【役割と心構え】
- 喪主をサポートし、参列者への感謝の気持ちを伝える。
- 参列者からお悔やみの言葉をいただいた際に、丁寧に対応する。
【具体的な挨拶の言葉】
受付を手伝ったり、会場で参列者をお迎えしたりする際に、以下のような言葉で感謝を伝えます。
-
参列者から「この度はご愁傷様です」と言われたら
「恐れ入ります。本日はお越しいただき、ありがとうございます。」 「生前は〇〇(故人名)が大変お世話になりました。」
-
基本的な対応
「本日はお忙しい中、誠にありがとうございます。」 「ご丁寧に恐れ入ります。」
※一人ひとりと長話をする必要はありません。簡潔に、心を込めて感謝の気持ちを伝えることが大切です。
3. 一般参列者の挨拶
一般参列者として弔問する際は、お悔やみの言葉をご遺族に伝えます。手短に、心を込めて伝えることが何よりも大切です。
【役割と心構え】
- ご遺族にお悔やみの気持ちを伝える。
- 長話をせず、手短に済ませる(ご遺族は多くの参列者に対応しているため)。
- 故人の死因などを尋ねない。
【挨拶の流れと具体的な言葉】
① 受付での挨拶 受付の方に一礼し、静かな声で挨拶します。
「この度はご愁傷様でございます。〇〇(フルネーム)と申します。」 香典を渡す際は、「御霊前にお供えください」と一言添えます。
② ご遺族への挨拶 ご遺族を見かけたら、近づいて一礼し、お悔やみの言葉を述べます。
最も丁寧で一般的な言葉 「この度は誠にご愁傷様でございます。心よりお悔やみ申し上げます。」
故人との関係性に応じて、一言付け加えることもできます。
「〇〇会社で同僚でございました、〇〇と申します。生前は大変お世話になりました。」 「突然のことで、まだ信じられません。お力落としのことと存じますが、どうぞご自愛ください。」
※ご遺族が他の方と話している場合は、少し待ってから声をかけましょう。状況によっては、黙礼(無言で深くお辞儀をする)だけでも弔意は伝わります。
全ての立場に共通する注意点:「忌み言葉」
葬儀の場では、不幸が重なることや死を直接的に連想させる「忌み言葉」は避けるのがマナーです。
- 重ね言葉:重ね重ね、たびたび、くれぐれも、追って など
- 直接的な表現:「死亡」「死ぬ」→「ご逝去」「永眠」
- 不吉な言葉:浮かばれない、迷う、消える など
宗教・宗派への配慮
キリスト教や神道、仏教の中でも浄土真宗など、宗派によっては「ご愁傷様」「冥福を祈る」といった言葉が適切でない場合があります。
相手の宗教が分からない場合は、「心よりお悔やみ申し上げます」「安らかなお眠りをお祈りいたします」といった言葉を使うのが最も無難です。
まとめ 大切なのは、いたわりの気持ちを交わすこと
葬儀の場での挨拶は、喪主、親族、参列者と、それぞれの立場によって言葉や役割が異なり、戸惑うことも少なくありません。
しかし、その基本は非常にシンプルです。 ご遺族は参列いただいたことへの「感謝」を、参列者はご遺族への「お悔やみ」を伝える。
この二つの心が交差する場が、葬儀における挨拶の本質と言えるでしょう。
難しい言い回しや、流暢な言葉は必要ありません。大切なのは、故人を偲び、残されたご遺族をいたわる真摯な気持ちです。短く、心を込めた一言こそが、何よりも深く相手の心に届きます。
この記事が、皆様が落ち着いて故人様とのお別れに向き合い、温かい心遣いを交わすための一助となれば幸いです。