葬儀での服装:喪服、アクセサリー、小物について
葬儀・告別式に参列する際の服装は、故人様とご遺族様への弔意を表すための大切なマナーです。
今回の記事では、喪服の種類からアクセサリー、小物に至るまで、分かりやすく詳細に解説します。
1. 喪服の基本と種類
喪服には格式があり、立場によって異なります。
| 種類 | 格式 | 着用する人 |
| 正喪服 (せいもふく) | 最も格式が高い | 喪主、三親等までの遺族 |
| 準喪服 (じゅんもふく) | 一般的 | 一般の参列者、遺族 |
| 略喪服 (りゃくもふく) | 略式 | 急な弔問、お通夜、三回忌以降の法事 |
一般の参列者としてお通夜や葬儀・告別式に伺う場合は「準喪服」を着用するのが最も一般的で失礼がありません。
2.【男性】の服装(準喪服)
男性の準喪服は、光沢のない生地のブラックスーツが基本です。
スーツ
- 色・素材:光沢のない漆黒のブラックスーツ(礼服)。ビジネス用の黒いスーツとは「黒の深さ」が違うため、可能であれば礼服を用意しましょう。
- デザイン:シングル、ダブルのどちらでも構いません。パンツの裾は、折り返しのない「シングル」が正式です。
ワイシャツ
- 色:白無地のレギュラーカラー。柄物や色付き、ボタンダウンは避けます。
ネクタイ
- 色・素材:光沢のない黒無地。
- 結び方:結び目にくぼみ(ディンプル)を作らないように、平らに結びます。
靴・靴下
- 靴:金具や飾りのない、黒い革靴。デザインは「ストレートチップ」または「プレーントゥ」が最適です。エナメル素材や、ローファー、ウィングチップは避けましょう。
- 靴下:黒無地。
その他
- ポケットチーフ:使用しません。
- 腕時計:シンプルなデザインのものなら問題ありませんが、外していくのが無難です。ゴールドや派手なものは必ず外しましょう。
3.【女性】の服装(準喪服)
女性の準喪服は、光沢のない黒のアンサンブルやワンピース、スーツが基本です。肌の露出を極力控えることが重要です。
服装
- 色・素材:光沢のない黒無地のアンサンブル、ワンピース、スーツ。
- デザイン:
- 襟元:詰まったデザインで、胸元が開いていないもの。
- 袖丈:夏でも肘が隠れる五分袖〜長袖。
- スカート丈:膝が隠れる長さ。正座をしても膝が出ない丈が理想です。
ストッキング
- 色:黒色の薄手のもの(20~30デニールが目安)。厚手のタイツや網タイツ、柄物はNGです。肌色のストッキングや素足はマナー違反となります。
靴
- 色・デザイン:光沢のない黒のシンプルなパンプス。ヒールは高すぎないもの(3~5cm程度)で、音の響かない太めのヒールが望ましいです。オープントゥやピンヒール、ウェッジソールは避けましょう。
バッグ
- 色・素材:光沢のない黒の布製が基本。金具が目立たないシンプルなデザインを選びましょう。殺生を連想させる革製品や、爬虫類系の型押しは避けるのが正式ですが、光沢のないシンプルなものであれば許容される場合もあります。
髪型・メイク
- 髪型:清潔感を第一に、長い髪は低い位置で一つにまとめます。顔にかかる髪はピンで留めましょう。
- メイク:薄化粧(ナチュラルメイク)を心がけます。ノーメイクはかえって失礼にあたる場合があるため避けましょう。口紅はベージュ系など控えめな色にし、ラメやグロス、つけまつげはNGです。
4. アクセサリーのマナー
アクセサリーは、基本的に結婚指輪以外は身につけません。
唯一の例外が、涙の象徴とされる「真珠(パール)」です。
もし着ける場合は、以下のルールを守りましょう。
| アイテム | OKなもの | NGなもの |
| ネックレス | 涙を象徴する「真珠(パール)」の一連ネックレス。 色は白か黒(グレー)。 | ※二連以上のネックレス(不幸が重なることを連想させるため)、ゴールド、ダイヤモンドなど光るもの全て |
| イヤリング・ピアス | 一粒タイプの真珠。 耳にフィットし、揺れないデザイン。 | 揺れるデザイン、フープ型、光る素材のもの |
| 指輪 | 結婚指輪のみ。 | ファッションリング、宝石のついた婚約指輪など |
| 腕時計 | シンプルなデザインのもの(外すのが無難) | ゴールド、派手なデザイン、スマートウォッチ |
※ダイヤモンドなど光る宝石は、結婚指輪についている場合でも外すか、石を内側に回すなどの配慮が必要です。
5. 小物のマナー
| アイテム | 詳細 |
| 数珠(じゅず) | 仏式の葬儀で使います。自分の宗派のものがあれば持参しましょう。なければ略式の数珠でも構いません。移動時は房を下にして左手で持ちます。 |
| 袱紗(ふくさ) | 香典袋を包むための布です。弔事では、紫、紺、深緑、グレーなどの寒色系のものを使います。香典を出す際に、袱紗から取り出して渡すのが丁寧な作法です。 |
| ハンカチ | 白無地が基本。 黒やグレーの無地でも構いません。タオル地や色柄物は避けましょう。 |
| コート・マフラー | 冬場は、黒や紺、グレーなど暗い色のものを着用します。会場に入る前に脱ぐのがマナーです。 |
| 傘 | 黒や紺、グレー、またはビニール傘など、地味な色のものを選びましょう。 |
6. お子様の服装
- 学生の場合:学校指定の制服があれば、それが正式な礼服となります。
- 制服がない場合:
- 男の子:白いシャツに、黒や紺、グレーのズボン。
- 女の子:白いブラウスに、黒や紺、グレーのスカートやワンピース。
- 靴は黒や紺の地味なもの、靴下も白か黒を選びましょう。キャラクターものや派手なデザインは避けます。
まとめ:故人を偲ぶ気持ちを装いに込めて
葬儀の服装マナーは、故人様への敬意とご遺族様への弔意を示すためのものです。
ルールが多く難しく感じるかもしれませんが、基本は「控えめ」「シンプル」「光沢のない黒」を意識することです。
この記事が、皆様が心静かに故人様とのお別れの時を過ごすための一助となれば幸いです。